「引っ越し業者ってブラックなのかな」「きついって本当?」「評判が悪いって聞くけど、そんなに大変なのかな」——就職や転職の候補に挙げているなら、一度は気になる疑問だと思います。
この記事では、新卒で引っ越し業者に入社し、正社員として3ヶ月(アルバイト期間を含めると約5ヶ月)で辞めた私の体験談を、できるだけ正直に書いていきます。
最初にお伝えしておくと、私は「引っ越しの仕事そのもの」が悪いとは思っていません。ただ、入った会社が私には合いませんでした。同じ業界でも会社によってここまで違うのか——そう気づくまでの話です。
引っ越し業者を選んだ理由——「業界の印象」で決めてしまった失敗
今振り返ると、私の就職活動には致命的な勘違いがありました。
それは、「引っ越し業界」と「引っ越し会社」をひとくくりに考えていたことです。
私が引っ越し業者を選んだのは、大学時代の日雇いバイトで何度か引っ越し現場に入った経験があったからでした。その現場ではストレスを感じることもなく、お客さんから「ありがとう」と言われると素直に嬉しい。「引っ越しの仕事も悪くないかもしれない」——そう感じていたのが、就職を決めた理由の一つでした。
ここで重要なのは、日雇いで入っていたのは、就職した会社とは別の会社だったという事実です。にもかかわらず私は、別会社で得た「いい印象」を、就職した会社にもそのまま当てはめてしまっていました。
冷静に考えれば当たり前ですが、同じ業界でも会社が違えば、職場の雰囲気も働き方もまったく違います。業界の印象で決めるのと、会社を見て決めるのは、まったく別の話なんです。
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就活生の頃、ここを区別できる頭が私にはありませんでした。
しかも入社前には、もう一つの違和感がありました。内定が出てから「正社員のスタートは4月だけど、2月からアルバイトとして来てほしい」と後出しで告げられたんです。実質は泊まり込みでの現場勤務でした。
「え、それは聞いていないんだけど…」と思いつつ、せっかく決まったところを辞退するのも気が引けて、結局そのまま受け入れました。今振り返ると、この時点で会社の体質をある程度察することはできたはずです。入社前の小さな違和感は、入社後の大きな違和感の前触れだったと、今ならわかります。
これから就職・転職を考えている人がいたら、「業界がよさそう」ではなく「この会社はどうか」を見てみてください。私のように業界の印象だけで決めてしまうと、入ってから後悔することになりかねません。
業界の印象だけで決めてしまった背景には、就活そのものを妥協していたことも関係しています。就活で妥協した経緯と、そこから学んだことはこちらに書いています。


1日のスケジュールと、体に出た変化
一番きつかったのは「朝の早さ」より「夜の遅さ」
引っ越し業者の仕事は朝が早いとよく言われますが、私の感覚だと本当にきつかったのは夜の遅さのほうでした。
朝6時半起き、7時15分前に会社到着、定時は16時45分。文字にすると普通の労働時間に見えるんですが、定時で帰れた日は5ヶ月でほぼありません。一番遅かった日は深夜25時に退社して、翌朝は普通に出勤でした。
しんどかったのは「いつ帰れるかわからない」という不確定さです。朝の時点では「今日は何時に終わるかな」が読めない。1日2案件で終わる日もあれば、3〜4案件をハシゴする日もあります。さらに遠方の引っ越しでは深夜集合があり、前日が休みとは限らないので、昼に普通に働いて夜にもう一度集合、ということも珍しくありませんでした。
「明日も多分長いんだろうな」と思いながら寝る日々は、体力的なきつさ以上に精神を削っていく感覚がありました。


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画像ではわかりやすく深夜集合の日の前日を定時退社にしてますが、ここが定時で帰れることはないと思った方がいいですね。
5ヶ月で8キロ痩せていた
辞めてから気づいたんですが、正社員3ヶ月+アルバイト2ヶ月の計5ヶ月で、体重が約8キロ減っていました。自分では実感がなくて、たまたま実家に帰った時に体重計に乗って初めて知りました。周りの人からは「痩せたね」とよく言われていたのを、軽く流していました。
食事は楽しむものというより、エネルギー補給という感覚に近かったです。動き回る仕事なので、食べていないとエネルギー不足で体が重くなる。だから「食べたいから食べる」のではなく、「補給しないと動けないから食べる」になっていました。手取り20万円ほどの給料を、それなりに食事に使っていたはずなのに、体重は減り続けていました。
当時は体のあちこちが悲鳴を上げていました。特に背中と足。背中の痛みは退職してからもしばらく続きました。
足はトラックから降りるだけで激痛が走るような状態でしたが、現場で動き出すとアドレナリンのおかげか、一時的に痛みが消えるんです。荷物を運び終えてトラックに戻り、座るとまた痛みが戻ってくる。その繰り返しでした。
本当にきつかったのは「人間関係」と「会社への不信感」
二極化していた職場の人
体力的なきつさは、日雇い時代から覚悟していました。覚悟していなかったのは、人間関係のしんどさです。
職場の空気は、常にピリピリしていました。最初は私自身が緊張していて気づかなかったんですが、慣れてくるほど居心地の悪さが見えてきます。
上司や先輩の印象は、はっきり二極化していました。人が良い人と、いつもイライラしている人。その中間がほとんどいないんです。職場環境がいいとは言えない場所だったので、「お人好しな人か、イラついている人しか残らない環境なんだろう」と感じていました。
帰りの電車に間に合わず、会社に泊まる人もいました。今振り返ると、あの環境が普通になっていた自分がちょっと怖いです。
リーダーに無視された日のこと
入社して間もない頃、現場でちょっと困ったことがありました。
ある荷物の梱包の仕方がわからなかったので、リーダーに声をかけて聞こうとしたんです。でも何度声をかけても無視される。少し大きな声で聞いたら、唸るような声を上げられて、私が梱包しようとしていたものを取り上げて「あっちに行け」と言われました。
意味がわからなかったのは、私がその荷物を梱包しようとしたのは「リーダーが梱包し終えたものがない」状態だったからです。当時私はトラックと家の間で荷物を運ぶ担当でした。運ぶものがないから、自分で梱包の手伝いをしようとしただけ。でも「あっちに行け」と言われても、やることがありません。
最初に渦巻いたのは戸惑いでした。なぜ無視されるのか、まったくわからない。それから少し遅れて悲しみが来て、最後にじわじわと怒りが込み上げてきました。感情がぐちゃぐちゃのまま、その日は何とかやり過ごしました。
その日の帰り、同期と「今日こんなことがあってさ」と愚痴を言い合いました。同期との会話で吐き出せなかったら、もっと早く心が壊れていたかもしれません。
「この会社、大丈夫か」と感じた瞬間
働き始めて1ヶ月ほど経つと、緊張で見えていなかった部分が見え始めました。
詳しく書くのは控えますが、少なくとも私が見聞きした範囲では、報告書の休憩時間欄が現場の判断で書き換えられているように感じる場面がありました。新卒で社会のことをよく分かっていなかった私は、「こういうことが実際にあるんだ」と衝撃を受けたのを覚えています。世間で言う「ブラック」という言葉が、急に身近に感じられた瞬間でもありました。
同期同士では「あれっておかしくない?」とよく話していました。逆に、それ以外の社員はあまり深く話さなかったので、慣れているのか気づいていないのか、本当のところはわかりません。
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新卒で初めて社会に出た目には、けっこう衝撃でした。今思うと、あの違和感は無視しなくてよかったです。
辞める決断のきっかけと、退職を伝えた日
体力的なきつさも、人間関係のしんどさも、辞める理由のひとつではありました。でも、最終的なトリガーになったのは、会社に質問してもまともに答えてもらえない状況がずっと続いていたことでした。
私は当時、就業規則・労働時間の扱い・見込み残業を超えた分の支払い・休憩時間の計算方法など、働く上で当然知っておきたいことを支店長に何度も質問していました。具体的に聞きたいことは10項目以上ありました。ちゃんと回答があったものもあるのですが、聞くたびに回答があやふやで、本社の方と連絡が取れなくてなどとはぐらかされる。何度行っても同じでした。
「この会社では、何かあってもちゃんと向き合ってくれないんだな」——そう確信したのが、最後の決め手でした。
退職を伝えた日
ある日の朝、「今日もう一度聞きに行って、またまともに取り合ってもらえなかったら辞めよう」と決めて出勤しました。
実際に質問しに行くと、案の定、同じようにあやふやな返事でした。
そこで一つ息をついて、「6月末でやめたいと思います」と伝えました。
支店長の反応は、特別なものはありませんでした。辞める人が多い職場なのだろうと思います。私への対応がずっとあやふやだったように、私自身もどこか煙たがられていたのかもしれません。
その日は何か特別なことをしたわけではありませんが、心の中で何かが一つ取れたような感覚がありました。
退職を伝えてから6月末までの期間も、特に揉めることはありませんでした。気まずさはありましたが、誰かが何か言ってくるわけでもなく、ただ「早く7月になってほしい」とだけ思っていました。
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辞めたいと伝えただけで体が少し軽くなったような気がしました。
私は自分で支店長に伝えましたが、職場によっては言い出すこと自体が難しい場合もあると思います。最近は退職代行という選択肢もあって、自分で言い出せない人にとっては手段のひとつになるかもしれません。
自分で言い出すのが無理、という状況なら、こういう選択肢を知っておくだけでも気持ちが少し軽くなるかもしれません。
ちなみに短期間で辞めることに対して、『それって逃げじゃないの?』と思う方もいるかもしれません。3ヶ月で辞めることを「逃げ」だと感じている方に向けて書いた記事もありますので、よければ読んでみてください。


辞めて本当に正解だった——同じ業界でも会社次第
辞めた直後の解放感と、その後の不安
退職直後の気持ちは、とにかく解放感でした。
肉体的にも精神的にもギリギリだったので、解き放たれた感覚のほうが強くて、将来のことなんてほとんど考えていませんでした。
1ヶ月ほど経った頃、ようやく「これから将来どうしよう」という不安が出てきました。やりたいこともなく、どうしたらいいかわからない。それでも疲労が抜けきっていなかったので、「まだ動きたくない」という気持ちのほうが大きかったです。
ただ、そんな状態でも「辞めなきゃよかった」とは一度も思いませんでした。あのまま働いていたら、身も心も壊れていたと、今でも本気で思っています。
その後職業訓練校へ進んで、プログラミングを学び直して社内SEに転職するまでの流れなどは、以下の記事にまとめていますので良ければ読んでみてください。


引っ越し業者を検討している人へ
最後に、これから引っ越し業者で働くことを考えている人に、私の経験から伝えられることをまとめておきます。
正社員として入ることは、正直あまりおすすめできません。体を痛める危険性が高く、相性の悪い人と一日中2人で行動する場面もあります。長く続けるには、体と心の両方にかなりの適性が要る仕事だと、5ヶ月でも痛感しました。
一方で、アルバイトとして短期で稼ぐのはアリだと思います。体力に自信があってお金を稼ぎたいタイミングなら、悪い選択肢ではありません。何より、合わなかったときに辞めやすいのが大きいです。
そして一番伝えたいのは、同じ業界でも、会社によって全然違うということです。私が日雇いで入った別の会社では、ストレスなく働けていました。「引っ越し業界」というくくりで判断するのではなく、「その会社」を見ること。これだけでも、私みたいな失敗はだいぶ減らせるんじゃないかと思います。
求人票でわからないことは、面接で聞いておくと後悔が減ると思います。質問にちゃんと向き合ってくれるかどうかも、大きな判断材料になるはずです。私の場合、入社前から「2月からのアルバイト勤務」という後出し情報があった時点で、もう少し慎重になっておけばよかったのかもしれません。
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辞めた選択に後悔はありません。あの経験があったから、今の働き方の有り難さがよくわかります。
5ヶ月という短い期間でしたが、私にとっては忘れられない経験です。辞めるという選択をしたことに、後悔は一度もありません。
業界全体ではなく「その会社」を見てみる——私が一番伝えたいのはこの一点です。私のように、入社前の小さな違和感を見送らない。それくらいで十分かもしれません。









